夕方のデッサン

美術

 

―― 今日は日差しが心地よいから、午後からデッサンしよっか

そうしてユリの花のデッサンを始めました。
開きかけていたつぼみが、描いている途中で開花しました。

 

「さあ、これから陰影をつけて整えていこう。」
という段階で日が暮れてしまいました。

まだ昼間は汗ばむような陽気が続いていたので、まだ夏の終わり頃のような気分でいたのです。
いつの間にか秋も深まってきていたことに気付きました。

自然光で描くならば、季節ごとの日の長さにも気を付けたいですね。

 

 

 

せっかくなので、トレーシングペーパーで形を写し取りました。

 

明日以降には他のつぼみも開花するので、また違った表情を見せてくれるはずです。
何枚もデッサンを描こうと思います。

 

わたし自身も10代後半に受験を意識しだした頃からデッサンが苦手になりました。
過去のわたしは試験や評価を成される物事に、つい萎縮してしまうところがありました。
日を追うごとにデッサンへの苦手意識が高まっていきました。

当時は田舎に住んでいたので塾に通うことができませんでした。
高校の美術部の活動の延長でデッサンの練習をさせてもらっていました。

夏休みに夏期講習に行ったときには周囲は東京の芸大・美大を目指して塾に通い続けている人や、浪人生ばかりの環境でした。

塾の先生からもほとんど相手にされず、批評会でも毎回のように順番を飛ばされ無視される有様でした。

大学に入学してからも、周囲は2年・3年塾に通い続けてきた人や、他の国公立大学を目指して1年・2年浪人してきた人たちに囲まれた環境だったので、自身の基礎力の無さを思い知らされる日々が続きました。

 

 

「それだけ伸びしろがあるってことでしょ?」

いまのわたしが、あの頃の自分に言ってあげたい言葉です。

 

その頃のわたしは、本当は誰にだって各々の人生を変えて行ける力があるということを知らなかったのです。
そして信じることができなかったのです。

 

その後、長いブランクを経て美術を再開したときには、さらにデッサン力は落ちていましたが、昔のわたしが繰り返していた無いものばかりに目を向けて落ち込むことはほとんどありませんでした。

そこにストイックな努力や自分攻めなんていらない。
ただ『気付くこと』それだけが必要なことだったのです。

えがく楽しさ、つくることの素晴らしさ、切り開く力の存在を多くの方々に伝えたいからこそ、わたしは制作を続けていきます。

 

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